女性の健康におけるグルテンと小麦④

食事に関する知見、今回は「女性の健康におけるグルテンと小麦」について書かれた論文の紹介、第4弾です。

今回はグルテンフリーダイエットが治療法の一つであると考えられる非セリアック病グルテン/小麦不耐症についてです。

セリアック病は日本人の有病率は低く、あまりなじみのない病気だと思います。

一方でグルテン/小麦不耐症はいかがでしょうか?

小麦を食べると何か調子が悪い、そんな方はもしかしたらグルテン/小麦不耐症かもしれません。

 

  • 非セリアック病グルテン/小麦不耐症

グルテン/小麦不耐症(非セリアック)はグルテン/小麦含有食品の摂取に関連する腸及び腸外の症状を特徴とする症候群です。

病態生理学的メカニズムはあまり明確ではありません。

グルテン/小麦不耐症の腸症状の悪化に関連する成分がグルテンなのか、それともアミラーゼ・トリプシンインヒビター(ATI)やFODMAP(小腸で消化吸収されず、大腸での発酵性を有する糖質の総称)といった小麦の他の成分なのかは明らかになっていません。

ATIは糖質、タンパク質の分解を助ける酵素(アミラーゼやトリプシン)を阻害する働きをします。また、FODMAPは様々な機能性胃腸障害で膨満感を引き起こす可能性があります。このような小麦に含まれるグルテン以外の成分の働きにより、なんらかの作用が起こり症状として現れているのかもしれません。

  

 

では病因、病態生理学的メカニズムが明らかになっていない中、どのように診断するのでしょうか。

グルテン/小麦不耐症(非セリアック)の診断は、腸及び腸外の症状を引き起こす小麦を使用した二重盲検プラセボ対照試験がゴールドスタンダードと見なされています。

しかし、実際の診察における二重盲検プラセボ対照試験の適応が難しいこと、特定の検査指標がないこと、報告された症状の病因が不確実であることなどから診断は容易ではなく、有病率は明らかになっていないのが現状です。

 

グルテン/小麦不耐症を訴える方は女性に多く、女性は小麦を含む食品を避ける可能性が高くなります。

しかしながら、グルテンや小麦に限らず何かを極端に制限する食事は、栄養バランスが崩れたりいずれかの栄養素の摂取が不十分になり、欠乏症(骨量減少症など)の発症を促すなど健康上の問題を引き起こす可能性があります。

 

これを裏付けるものとして、Carroccioらにより実施された研究が紹介されています。

セリアック病、過敏性腸症候群、およびグルテン/小麦不耐症の患者を比較した骨粗鬆症の有病率の調査です。

結果としては、グルテン/小麦不耐症患者は腰椎と大腿骨頸部の両方で骨密度が低くなることが分かりました。さらに、セリアック病患者はもっと低くなりました。

また、BMI及びヘモグロビンと関連が見られ、栄養の偏りがおこりやすくなると考えられました。

実際にグルテン/小麦不耐症(非セリアック病)の食事性カルシウムの摂取量は、恐らく複数の食物過敏症の存在により、推奨量よりもはるかに低いことが分かりました。

この結果から治療の一環としてグルテンフリーダイエットを行うセリアック病及び、グルテン/小麦不耐症では食事性カルシウムの摂取量は不足してしまうことが示唆されています。

グルテンや小麦を制限する食事は、欠乏症(骨量減少症など)の発症を促すなど健康上の問題を引き起こす可能性があるので、制限しない食事に比べ、不足する栄養素を補うなどの栄養管理が必要と思われます。

 

Mansuetらによる研究では自己免疫疾患の発症率は過敏性腸症候群および健康な対象よりもグルテン/小麦不耐症(非セリアック)で高くなっています。

自己免疫疾患は女性の性別、非セリアックグルテン/小麦不耐症の診断時の年齢などと関連があります。

著者らは「グルテンへの暴露が長ければ長いほど、局所的な炎症によって引き起こされる自己免疫反応性が強くなり、腸透過性が高まり、最後に自己免疫疾患の発症を引き起こす可能性がある」という仮説を立てました。

この研究では、非セリアックグルテン/小麦不耐症患者の約70%が血清抗核抗体(ANA)の陽性を示し、自己免疫疾患である膠原病の素因をもっていることがわかりました。

 

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