管理栄養士の真崎です。
食事に関する知見、第2回は「グルテン」「グルテンフリーダイエット」についてです。今回から「女性の健康におけるグルテンと小麦」について書かれた論文を数回に分けてご紹介致します。
最近は「グルテンフリーダイエット」、「グルテンフリー」という言葉をよく耳にします。実際、グルテンフリー食品の市場は年々大きくなっており、食の選択肢として身近なものになってきています。
しかしながら、現在も「グルテンフリー(グルテンを避けること)」によるメリット、デメリットについては分かっていないことも多いのが現状です。
そんな話題の「グルテン」、「グルテンフリーダイエット」ですが、「グルテン」とはどんな栄養素で、「グルテンフリーダイエット」とはどのような食事でしょうか。
- 「グルテン」
まず「グルテン」とは、水を加えて捏ねた小麦粉に含まれるたんぱく質の一種です。
小麦粉に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のアミノ酸(たんぱく質の材料)が水を加えてこねることで絡み合ってできます。
「グルテン」は網目状の構造であり、酵母から発生した二酸化炭素などの気体をしっかり包み込みます。そのため、パンやピザ、うどんのようにもちもちとした食感やふわっとした食感を生み出す為に利用されます。
普段の食事の中でグルテンの特性である粘弾性を利用した食品を口にする機会は多いのではないでしょうか。
- 「グルテンフリーダイエット」
①定義
「グルテンフリーダイエット」とは「グルテン」を除去した食事のこと。
つまり、「グルテン」を含む食品(小麦)を避けることで構成されています。
ダイエットと聞くとやせるための食事というイメージがあるかもしれませんが、英語での意味は「食事」なので、「グルテンフリーダイエット」とは本来、「グルテン」を避けた食事という意味になります。
「グルテンフリーダイエット」は全ての人にとって、やせる、健康に良い食事というわけではなく、グルテンを避ける必要のある人にとっては健康に良い食事という意味であることに注意が必要です。
セリアック病、非セリアック病グルテン/小麦不耐症の方はグルテンを避けることが治療となります。
また、「グルテンフリー」という表示には注意が必要です。
日本では「グルテンフリー」という表記には明確な基準がなく、「小麦アレルギー」の表示が義務付けられています。
消費者庁によると、日本の小麦アレルギーの表示基準では数ppm以上の小麦総たんぱく量を含む状況であれば、容器包装に「小麦」のアレルギー表示をしなければならないと定められています。少量でもアレルギー反応が出る方もいらっしゃることから、ごく少量、混入の恐れがある場合でも表示する必要があります(グルテンに限らず小麦たんぱく)。
一方、EU/アメリカ等のグルテンフリー表示はセリアック病の人の商品選択に資する観点から、グルテン濃度が20ppm以下であれば「グルテンフリー」表示が可能となります。
セリアック病の病因たんぱくには小麦のグルテンだけでなく、大麦やライ麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、オーツのアベニンなどグルテンの類似たんぱくがあり、「グルテンフリー」表示に包括されている場合があります。また、それらには穀物の収穫、輸送、保管、加工処理等の工程間に小麦グルテンの混入の恐れがあります。
このように日本と海外では小麦アレルギーの方へ向けたものなのか、セリアック病の方へ向けたものなのかと目的が異なる為、基準の内容も異なります。
今回紹介する論文は英語、イタリア語で書かれた論文を解析したものであるため、海外における「グルテンフリー」の基準であると考えられます。
②欠点・落とし穴
論文によると、「グルテンフリーダイエット」は飽和脂肪酸、砂糖、塩分が豊富であることが多く、たんぱく質、食物繊維、ビタミン類が少ない傾向にあります。
また、微量栄養素(ミネラル)の欠乏、高脂血症、高血糖、冠動脈疾患のリスク増加と関連しています。
腸内細菌叢の組成にも影響を与えながら、細菌の種類の豊富さを低下させる可能性があることが示唆されています。
特に、健康な被験者ではビフィズス菌などのプロバイオティクス種(宿主の健康に良い効果をもたらす微生物)の減少を引き起こし、病原性大腸菌や腸球菌、病原菌を増やします。
このようにマイナスな要素も多くある「グルテンフリーダイエット」ですが、どうして取り組む方が増えているのでしょうか。
その理由の中には、体重減少、この食事療法がより健康的であるという認識、およびグルテン摂取によって引き起こされる症状があります。
消費者の大多数は女性であり、多くの場合他の食物不耐症(乳糖など)を持っています。
次回は「免疫の反応の引き金としての小麦」についてお伝えいたします。